(要確認)糸リフトって金ドブなんですか?——患者様の素朴な疑問に、院長が全部答えます


先生、今日は糸リフトの話を聞かせてください。院長の糸リフト、すごく人気ですよね。
院長:今日は糸リフトについてですか。山田さん、興味ありましたっけ?
まあ、それはいいとして。ありがたいことに、当院の糸リフトはずっと人気をいただいています。

日本中から患者さんが来てるって聞きましたよ。リピーター様も多いみたいで。
開業初期——もう5年前になりますが、当時は国内最安値クラスだったこともあって、日本中から患者さんが押し寄せてきていました。
今は糸リフトの価格破壊がだいぶ進んだので、さすがに昔みたいに全国から殺到、とまではいきません。
それでも関東や関西など遠方からわざわざ来てくださる方は多いですし、リピーター様もかなりいらっしゃいます。これは本当に、感謝しかないです。
選ばれる理由は3つ——「糸の質」「入れ方」「正直さ」

先生の糸リフトが選ばれる理由って、何なんですか?
いくつかありますけど、とても簡単に言うなら——糸の質、入れ方とデザイン、効果の伝え方が正直であること。この3つだと思います。

糸の質って、そんなに差があるんですか?
意外とありますよ。仕入れ値で数百円、みたいな糸も現実に存在します。
もちろん全部が悪いとは言いませんが、当院では、ある程度名前の通った糸か、無駄に高くついたオリジナル糸を使っています。

「無駄に高くついた」って言い方が先生らしいですね。
オリジナル糸って、名前だけ変えた『なんちゃってオリジナル』も世の中にはあるんですよ。
でもうちのは鋳型から作ってもらったので、本当にコストがかかっている。価値も感じてます。ただ、普通に高い。経営的には、かわいくない出費です。
ちなみに、当院で採用している糸の1本あたりの仕入れ値を言うと——Tリフトは約6,000円、Vリフトは約4,000円。そして特注の糸は8,000円くらいです。あくまで、当院規模のクリニックが仕入れる場合の価格ですが。

だいぶ値段に差があるのですね。
だいぶ、ですね。ちなみにTリフトやVリフトは、安価なOEM製品も出回っているようです。
「入れれば上がる」は、一番危ない誤解

入れ方とデザインは、何が違うんですか? 正直、糸って入れれば上がるのかなと思ってました。
ここが一番誤解されやすいところです。
私は著名な先生方から教わった基本を愚直に守って、そこから自分なりに成長させてきました。
奇抜な手法は取りません。狙いは2つ。
直後の自然なリフト感と、将来のたるみ予防につながる『支え作り』です。
糸の本質って、下がった組織を永続的に吊り上げ続ける魔法ではなくて、支えの組織や靭帯周囲を補強する、支点を増やす、という考え方に近いんです。

でも先生、ネットだと「糸は5年上がりっぱなし」って見たことがあります。
今時そんな誇大広告をしているところがあるんですね。少なくとも医療としては現実的ではありません。
切開リフトですら、時間が経てばある程度はたるむ。糸リフトはなおさら、後戻りがあります。これは必ず説明しています。
「金どぶ」と言われる理由は、期待値のズレにある

後戻りがあるなら、糸リフトって『金どぶ』って言われるのも分かる気がします。
金どぶ。この業界の治療でよく聞くセリフですね。
糸が金どぶと言われてしまう背景には、業界のPRと実際の効果がズレていた問題があると思っています。
糸は「上がりっぱなしを買う治療」ではなく、「今の形を少し整えて、今後たるみにくい土台を作る治療」です。そこの期待値を誤ると、がっかりして当然だと思います。

じゃあ先生、糸リフトって結局、やったほうがいいんですか?
条件つきで、私は「やっておいた方が良い」派です。
たるみの悪化を防ぎたい。糸に抵抗がない。費用が大きな負担ではない。この3つが揃うなら、やっておく価値はある。
ただ、大前提として言いたいのは、たるみ治療は照射系がメインだということ。高周波(デンシティ、サーマジェン、オリジオ)やハイフ、ソフウェーブなどで定期的に引き締める。その上で、糸で支えを追加する。この順番です。
「糸を入れたから1年何もしない」——これだと本当にもったいない。
それなら糸を入れずに、照射系に予算を回した方がよっぽど合理的です。

私も糸、入れたほうがいいでしょうか。60歳ですし。
将来的なたるみを予防したくて、今後も高周波などのメンテナンスを受けるつもりがあるなら、お勧めです。
逆に、糸だけで何とかしたいなら、私は慎重になります。
溶ける糸か、溶けない糸か——院長の答えは明快

溶ける糸と、溶けない糸。どちらがお勧めですか? 両方あるみたいで混乱してます。
当院の考えとしては、圧倒的に溶ける糸です。
一般に糸リフトで使われる吸収糸にはPDO、PLLA、PCL、ハイブリッドのPLCLなどがあって、素材によって体内で分解されるまでの期間が違います。
文献では、PDOは短め、PLLAは中間、PCLは長め、というのが大まかな整理です。吸収糸は挿入後にコラーゲン増生などの組織反応が起きうることも報告されています。

感染が怖いので、溶けない糸の方が危ないってことですか?
感染については、適切な手技と衛生管理が前提なら、どちらの糸でも頻度は高くありません。
ただ、吸収糸の方が有害事象が比較的低率だとする報告はあります。
でも、私が溶けない糸を勧めにくい理由は別のところにあるんです。
年齢とともに顔の構造は変わります。脂肪が痩せて保護が減ると、糸の先端が皮膚に当たりやすくなったり、違和感が出るケースがありえる。そうなったとき、抜去にはリスクが伴うことがあります。
それともう1つ。これは患者さんの『心の安全』の話です。SNS上で溶けない糸が悪の象徴みたいに扱われている現実がある。
もし溶けない糸を入れた後にそういう不安情報を見て後悔しても、簡単には元に戻せない。
吸収糸なら、時間が解決してくれる部分がある。
なお、非吸収糸は遅発性の合併症で除去が必要になる場合がある、という論点は医療文献でも示されています。

院長が溶けない糸を勧めてない理由には、SNS上のネガティブなイメージも含まれるんですね。
そうなんですよ。僕の師匠は溶けない糸の第一人者なので、本当は溶けない糸も前面に出していきたい気持ちはあります。ただ、時代的に批判されやすいので……。
種類が多すぎて選べない問題

ありがとうございます。あとは、糸の種類が多すぎ問題があります。結局、何を選べばいいんですか?
基本は、そのクリニックが患者さんの悩みに対して提案する糸で良いと思います。ただし注意点はあって——
広告では「糸リフト」と書いてあるのに、実際はリフト目的ではないショッピングリフトだったり。
名前は立派でも一番安い糸を勧められたり。
こういうことは起こりえます。安く仕入れて高く売る、がビジネスの基本ですから、仕入れ値が一番安い糸を最も高い値段設定にして勧めてくるケースもある。
もちろん仕入れ値と糸の質が完全に相関するわけではありませんが。
自分でも少し調べるのが安全です。TESS、VOV、ミントなど、国内でも流通名として知られている名称を目安にするのも一つの方法ですね。
本数の話——なぜ当院は「多く売るほど儲からない」設計にしたのか

必要本数って、どうやって決めるんですか? 患者さんも迷いませんか?
迷います。しかもクリニック側の事情も絡んでくる。
1本単価を極端に安くしていると、ある程度の本数を提案しないと経営が成り立たない。
逆に少本数を売りにするところは、1本単価が高かったりする。
当院は、糸を『支えを増やす施術』と捉えているので、ある程度の本数は必要だと考えています。
ただ、売上目的で本数を増やす営業は絶対にしたくなかった。
だから、本数が増えても当院の利益が増えにくく、むしろ減ることもある謎設計にしてあります。
仕組みの詳細は省きますが、少なくとも「本数を増やすほど儲かる」という形にはしていません。
ここだけの話、8本くらいの少数で希望された方が利益は大きいんですが、皆さんキャンペーンの12本とかで申し込まれます。

私が患者さんだったら、12本やモニターの16本を希望しますね。
痛みとダウンタイム——ゼロではない、でも

痛みとかダウンタイムって、実際どうなんですか? みんな気になるところです。
全くのゼロではありません。
よくあるのは腫れ、痛み、若干のひきつれ感、糸の触知。多くは時間とともに改善します。直後から自然な外見になるよう心がけてはいますが、たるみが強い方などは若干のいびつさは生じます。
とはいえ、仕上がりでお叱りを受けるようなことはなく、満足度の高さがリピート率に繋がっているのだろうと——勝手に信じています。
後戻りがある。それでも糸をやる意味

最後にもう一回だけ。後戻りがあるのに、糸をやる意味って何ですか?
後戻りはあります。でも、積み重ねが効く治療だと思っています。
たるみが軽いうちに、照射系で土台を引き締め、必要に応じて糸で支えを足す。そうすると、将来の崩れ方が緩やかになる。
逆に、長年ノーケアで一気に糸だけ入れても、後戻りは早いです。
糸リフトは魔法でも奇跡の治療でもありません。日々のたるみケアの延長線上にある、地味な一手です。
でも、その地味な一手を丁寧に積み上げた人が、数年後に周囲よりちょっとだけ輝いて見える。そんな治療です。

今日の話、すごく腑に落ちました。糸って派手な治療に見えますけど、考え方は地味なんですね。
地味も地味。でも、その「地味」の先にしか本物はないと思っています。

福岡・天神・大名・美容皮膚科|トータルスキンクリニック院長
Dr. 分山博文
最後に ~ 院長ブログについて ~
上手な言い回しは苦手ですが、誠実な美容医療を届けたい気持ちは本物です。
だからこそ、言葉だけは自分で紡ぎたいと思っています。
ちょっと不格好でも、この文章が誰かにそっと届けば嬉しいです。

