売り上げノルマのない美容クリニックを選んだ理由── 素直さを失わないための運営方針

多くの美容医療がビジネス色を強めるなか、トータルスキンクリニックが「売上ノルマを置かない」理由とは何か。
本記事では、院長が過去の葛藤から導き出した『素直さを失わないための経営方針』と、誠実な提案を貫くクリニックの在り方について率直に語ります。院長と山田のインタビュー形式で伝えていきたいと思います。

インタビューは私、山田が担当します。
本日はよろしくお願いいたします。
今回は、トータルスキンクリニックに『売上目標』や『ノルマ』が存在しない理由について、率直なお話を伺いたいと思います。
院長:よろしくお願いします。 今の美容医療業界では、ノルマや数字の意識があるクリニックの方が一般的かもしれません。 ただ私は、自分が素直でいられる医療の形を守りたくて、今のスタイルを選んでいます。
「患者様の笑顔より数字」になってしまう怖さ

素直でいたい、という言葉が印象的です。 何かきっかけがあったのでしょうか?
以前ですが、某美容クリニックで働いていた時の経験が影響しています。
そのクリニックは売上目標が全体に課せられる文化で、一人が歩調を乱すと全員に迷惑がかかる空気がありました。
補足ですが、大変お世話になった最大手美容クリニック様のことではないので、誤解しないようお願いします。

あの大手さんじゃないのですね。わかりました。 その某美容クリニックは、よくある全員で売り上げ目標に向かう、一体型のスタイルですね。
そうです。そのため、アップセルが成功するとスタッフ全体で喜び合う仕組みになっていました。
正直、最初は強い違和感がありました。 「なぜ売上が決まっただけでこんなに盛り上がるんだろう」と。
長いこと保険診療の現場にいたこともあったので、喜ぶポイントの違いに戸惑いがありました。
ところが、人というのは怖いもので……何度もその空気にいると、いつの間にか私も同じようにアップセルの成功を喜ぶようになってしまったんです。 しかも、患者さんの笑顔よりも、数字を達成できた時の方が嬉しいと感じてしまう瞬間すらありました。 その変化に気付いた時、自分に対して強い嫌悪感がありました。

その変化をご自身で自覚していたんですね。
自覚してましたね。 人は環境に適応してしまう生き物ですが、その適応が自分を良くない方向へ連れていくこともあるんだと痛感しました。 そして、患者さんへの言い方にもズレが出てしまう瞬間がありました。
たとえば、広告の『○○法、29,800円』といったお得な施術を希望して来院された方に、「その施術ではあなたの症状には不十分です」「こちらの上位施術でなければ改善しません」といった言い方をしてしまい、結果的に外見コンプレックスを指摘しながら高額施術へ誘導するような対応になってしまったことがあるんです。

その状況は、つらいですね。
本当にそう思います。 今振り返っても、やはり苦手でした。 定期的に売上順位も見せられ、順位が低ければ肩身が狭いような空気でした。 資本主義の世界なので理解はできますし、そうして成長されているクリニック様が多いのも事実ですし、成長のためにはそうあるべきなのも理解しています。
贅沢を望まなければ、誠実な経営でも生きていける

その中で、院長は別の選択をされた。
そうです。 数字を追う働き方は、自分の心が荒れてしまうと思ったんです。 ただ、「誠実さだけでは経営は成り立たない」という意見があることも十分理解しています。
とはいえ、今の美容医療業界では、適正価格で、必要だと判断した施術だけを提供していても、クリニックが生きていくための利益は確保できます。 贅沢を望まなければ、誠実な経営でもどうにかやっていける。 この事実が、私の背中を支えてくれました。

クリニック全体としても、その価値観が共有されているのでしょうか?
ありがたいことに、私の思いに共感してくれる職員が多く、クリニック全体で「患者様に寄り添う」という考え方を大切にしてくれています。
もちろん一時期、数字に強くこだわる方がいたこともあります。 その方は、うちの価値観とは少し合わなかったのか、別のクリニック様に移られました。 価値観の合う・合わないは、本当にどこにでもあります。
患者さんも職員も、全員に合うクリニックなんて存在しません。 それでも、当院の考えに共感してくださる方たちに支えられて、どうにかやっていけています。
「負け犬の遠吠え」でも構わない。素直さを守るための覚悟

素直に働ける環境を守ることが、院長の軸になっているのですね。
そうですね。 私は心を曲げてまでこの業界にしがみつくつもりはありません。
もし今後、美容医療の環境が変わり、今のように素直でいられる経営が難しくなるなら、その時はクリニックを畳むことも考えています。

潔い考え方ですね。
ありがとうございます。 ただ、率直に言えば、こういった運営では経済的な成長は遅くなります。
大手のような拡大もありませんし、設備投資にも限界があります。 今回の発言自体、ある意味『負け犬の遠吠え』に見えるとも思っています。

私は、その率直さが信頼につながっていると思います。
そうだと嬉しいです。 ただ、ノルマを置かないことで課題もあります。
「もっと積極的に提案してほしい」「受けられる施術は全部受けたい」と望まれる方もおられます。
当院が提案する、当院としての適正な提案は、そういった方には物足りなく映るかもしれません。 これは当院の弱点であり、改善するともっと経済的な成長は期待できるのかもしれません。

それでも、この姿勢を貫く理由は?
やはり、自分が素直でいたいからです。
数字よりも、自分が納得して提案できる医療の形を守りたい。
そのためには心に余白が必要で、ノルマがあるとその余白が一気になくなってしまう。
私は、自分の心が整った状態で、ひとりひとりに「必要だ」と思う提案をしたい。 そして、価値観の合う職員・患者様とともに、静かにこの場所を続けていきたいと思っています。

最後に、これからもこの運営方針を続けていくうえで、大切にしたいことを教えてください。
派手な成長や拡大は望んでいませんが、落ち着いて、安心して通っていただける場所でありたいと思っています。
そして、自分の素直さを失うような変化が業界に起きた時には、しがみつかずに退く覚悟も持っていたい。 そんな気持ちで、今のクリニックを続けています。

福岡・天神・大名・美容皮膚科|トータルスキンクリニック院長
Dr. 分山博文
最後に ~ 院長ブログについて ~
上手な言い回しは苦手ですが、誠実な美容医療を届けたい気持ちは本物です。
だからこそ、言葉だけは自分で紡ぎたいと思っています。
ちょっと不格好でも、この文章が誰かにそっと届けば嬉しいです。

