SNSの情報にどう向き合うか LIZNE(リズネ)を巡る騒動と当院の選択

今回の騒動をどう受け止めているか

インタビューは私、山田が担当します。本日はよろしくお願いいたします。
本日は、SNS上で話題となったLIZNE(リズネ)を巡る一連の騒動について、お話を伺えればと思います。
まず率直に、今回の出来事をどう受け止めていらっしゃいますか。
正直なところ、いくつもの感情が入り混じっていて、一言では言い表せません。
一番強く残っているのは「悔しさ」でしょうか。
もし自分にもっと発信力があれば、間違った情報が広がる前に訂正できたんじゃないか…そんな思いが、今も頭をよぎっています。
そして何より、不安を感じさせてしまった患者さんへの申し訳なさもあります。
これは今でも心に残っています。
それから、これはリズネだけの話じゃない。 同じようなことが、今後も繰り返されるんじゃないか…そういう業界全体への危機感も、強く感じた出来事でした。
SNSで広がった製造中止とアレルギーの噂について

SNSでは「アレルギーが原因で製造中止になったのでは」という情報が広がりました。
確かに、過去にリズネ使用後のアレルギーを疑う投稿は、少数ながら存在していました。
そこに製造中止のニュースが重なって、「やっぱりアレルギーが原因だったんだ」という話が一気に広まりました。 その流れは私も見ていました。
ただ、実際の製造中止理由は、メーカーが発表している通り、製造会社と販売会社の権利関係の問題なんです。
製造会社が「今後は自社ブランドだけを作る」という方針に切り替えた結果、リズネを含む複数のブランドが市場から姿を消すことになりました。
強い言葉が不安を煽るSNSの現実

SNSでは、かなり強い表現も見られましたね。
ええ、本当に。
「特定の製造年は危険」「アレルギーを隠して使っていた医師は責任を取れ」「安易に韓国製を使うからこうなる」…そんな煽るような投稿が次々と流れてきました。
中には医師を名乗るアカウントからの発信もあって…。
それを見た一般の方が、必要以上に不安を募らせていった印象があります。
リズネとアレルギーリスクの実際

実際、リズネのアレルギーについてはどうお考えですか。
リズネでアレルギーが起こり得ること自体は、事実だと思います。
当院でも、アレルギーを疑う症例を1例経験しています。 その方には診察のうえでお薬を処方して、症状は速やかに改善しました。 その後も経過を確認していますが、重篤な経過にはなっていません。
ただ、ここが大事なポイントなのですが、リズネが他のPN製剤と比べて「明らかにリスクが高い」と言えるかどうかは、現時点では分からないんです。
ポリヌクレオチド製剤全般に共通するリスクかもしれない。 あるいは、リズネは使用症例数がとても多かったから、単純に報告が目立っただけかもしれない。 そのあたりは、まだ判断がつかない状況です。
変わってしまったリズネのブランドイメージ

それでも、リズネの印象は大きく変わってしまいましたね。
残念ながら、そうですね。 ブランドイメージが大きく傷ついてしまったのは、否定できません。
簡単に言えば、ケチがついた。
後から訂正や補足を出している方もいらっしゃいますが、最初に流れた強い否定的な情報だけが、ずっと残り続けている。 そういうケースも多く見かけます。
これは、今のSNSが持つ力の大きさと、同時にその怖さを象徴している出来事だなと感じています。
患者さんの不安と現場での対応

患者さんからの反応はいかがでしたか。
SNSの情報を見て不安になる気持ちは、よく分かります。 あれだけの情報が流れれば、不安にならないほうが難しいですよね。
実際、「リズネを別の製剤に変えてほしい」というお問い合わせも複数いただきました。
ただ一方で、私自身にはその不安を覆せるだけの情報量も発信力もない。そんな情けない現実も、痛いほど感じました。
だからといって、不安を抱えたまま施術を受けていただくわけにはいきません。
SNSの情報を頭ごなしに否定するのではなく、「今の段階で分かっていること」と「まだ分かっていないこと」をきちんと分けて、できるだけ丁寧に説明しました。でも、不安は払しょくできなかった。
製剤切り替えという苦渋の判断

その結果、製剤の切り替えという判断に至ったのですね。
はい。理論上は、リズネを使い続ける選択肢もありました。 でも、効果やコスト以前に、患者さんの安心感を優先すべきだと考えたんです。
現時点で当院にある薬剤の中で代替になり得るのは、プルリアルシルクしかありませんでした。
正直に言うと、水光注射のPNプラスやトライフィルプロでは、シルクを大量に使うため、ほぼ赤字に近い施術になります。 経営的には、かなり苦しい判断です。
それでも、このタイミングで切り替えなければ、これまで積み重ねてきた患者さんからの信用を失いかねない。 そう感じました。
安心感を優先するための、やむを得ない選択だったと思っています。
SNS時代に医師として向き合う姿勢

院長ご自身としては、今回の一件をどう受け止めていますか。
正直に言えば、私はSNSで世の中を動かせるような、影響力のある医師じゃありません。
だからこそ、明らかに間違った情報が広がっていくのを、歯がゆい思いで見ていることもあります。
でも、SNSで「勝つ」ことより、目の前の患者さん一人ひとりに誠実に向き合うこと。 それだけは、手放したくないんです。
派手な発信はできなくても、現場でやるべきことをきちんとやる。 今の私にできるのは、それだけだと思っています。
それと、もうひとつ。
私自身も、いつか間違った情報を発信してしまう側になるかもしれない。 その可能性は、否定できません。
だからこそ、人を強く責めるような立ち振る舞いは避けたい。 できる限り冷静に、事実と向き合い続けたいと思っています。
読者・患者さんへ伝えたいこと

最後に、この記事を読む方へ伝えたいことはありますか。
今回の一件で、SNSの持つ力の大きさと、それに伴う不安を強く感じました。
情報は一瞬で広がる。 でも、訂正や補足はなかなか届かない。
これは医療業界に限った話じゃなく、現代を生きる私たち全員に関わる問題だと思います。
発信する側も、受け取る側も、SNSとどう向き合っていくのか…。その覚悟と責任が、これからますます問われていくんじゃないでしょうか。
当院としては、これからも事実に基づいた説明を大切にしながら、患者さんが安心して治療を受けられる環境を守り続けていきたい。 そう思っています。

福岡・天神・大名・美容皮膚科|トータルスキンクリニック院長
Dr. 分山博文
最後に ~ 院長ブログについて ~
上手な言い回しは苦手ですが、誠実な美容医療を届けたい気持ちは本物です。
だからこそ、言葉だけは自分で紡ぎたいと思っています。
ちょっと不格好でも、この文章が誰かにそっと届けば嬉しいです。

