他院からの営業妨害と、僕たちが守りたかったもの


院長、今日はちょっと……聞きづらいことを聞いてもいいですか。
以前、他のクリニックからの営業妨害があったという話。
もうだいぶ時間が経ちましたし、院長のお怒りも収まった頃かなと思いまして。
そろそろ聞いてみてもいいですか?
例の件ですか。山田さんに気を遣わせてしまってすみません。
正直に言うと、まだちょっとくすぶっているところはあります。
でも、山田さんがそのことを話題にしたいなら、お話しましょう。

ありがとうございます。では、何があったのか、最初から教えていただけますか。
経営方針が合わなかった職員の話
はい。まず前提として、うちには以前、経営方針が合わなかった職員がいたんですよ。
その方は、言ってしまえば「売り上げ絶対主義」みたいなところがありました。
たとえば、「自分に指名が入ったらインセンティブをつけてほしい」とか、「化粧品を売ったら売り上げの一部を還元してほしい」とか、そういった提案を繰り返していたんです。

なるほど。それに対して院長はどう対応されたんですか?
うちは以前からお伝えしている通り、売り上げノルマを設けない方針でやっています。
患者さまに必要のないものを売りつけるようなインセンティブ制度は、うちのやり方には合わない。
だから、「そういったやり方は当院には合いませんので」と、はっきり提案をお断りしていました。

それで、その方はどうされたんですか。
そうしたら、他のクリニックに移っていきました。
引き抜かれた、というのが正確なところです。
正直、そのときは「ご自身を評価してもらえるところが見つかったのであれば、よかったじゃないか」と思っていたんです。
お互いにとってその方がいいだろう、と。
患者さまからの情報提供で発覚

ところが、事態はそう単純ではなかった。
どうやら、その方は当院のことをかなり恨んでいたようでして。
移った先のクリニックで、当院の悪口を相当言っていたんです。全くの事実無根の悪口を。

悪口というのは、具体的にはどういった内容だったのでしょうか。
患者さまから聞いた話なので詳細は控えますが、嘘偽りの、名誉毀損にあたるようなレベルの発言を繰り返していたようです。
しかも、それだけではありません。
当院に在職していたときに患者さまと個別にLINEを交換していたらしく、そのLINEを使って、「あそこは絶対に行かない方がいいよ」「新しく私が勤める○○クリニックに来てね」と、患者さまの引き抜きまでしていたんです。

それは……かなり悪質ですね。
おそらく、患者を引き抜いたらいくら、というようなインセンティブの契約があったのだと思います。
やっていることの根っこが、結局同じなんですよ。すべてがインセンティブ、すべてがお金。

それはどうやって発覚したんですか?
ここが、僕が真面目にやっててよかったと思える部分でもあるんですが――。
その方が移った先のクリニックを受診された当院の患者さまが、あまりにひどい誹謗中傷を聞かされて、心配してくださったんです。
「先生、こんなことを言われていますよ」「嘘だと分かっていても、聞いてて気持ちのいいものじゃなかったです」と。
しかも、一人や二人じゃない。多数の患者さまから情報提供がありました。

患者さまが自ら知らせてくださったんですね。
はい。それは本当にありがたかったです。
と同時に、その方々に不快な思いをさせてしまったことが申し訳なくて。
相手先クリニックの実態
そこで僕たちもいろいろと動いたわけです。
調べていくうちに、相手のクリニックの実態が見えてきました。
そこは、オーナーがドクターじゃないんですよ。最近よくある、非医療者が金儲け目的で開業したタイプのクリニックでした。

医師ではないオーナーが経営しているクリニック、ということですか。
そうです。しかも、複数のコンサルタントのような人たちが入っていて、みんなが自分の利益のためにそのクリニック自体を食い物にしているような、なんとも悲惨な状態でした。
たとえば、
- 化粧品会社から売れもしない化粧品を数千万円単位で買わされている。
- 質の悪い点滴製剤を「最高品質」のように宣伝して患者さまに提供している。
それらも全部、外部コンサルに食い物にされた結果です。

患者さまにとっても、そのクリニックのオーナーにとっても、不幸な状況ですね。
本当にそう思います。関わる人がみんな損をして、得をしているのはコンサルだけ。
そういう構図でした。
話し合いにならなかった交渉

僕は、誹謗中傷をやめてほしいという連絡をそのクリニックにしました。
ところがまず、出てきたのがオーナーじゃないんですよ。
名前もホームページに出ていない、よくわからない女性が「外部窓口」として対応してきました。

外部窓口、ですか。
はい。当院側の思いを伝えたところ、いきなり激怒されましてね。
「うちの患者がそっちで言ったんですか」「今からそっちに行くからカルテを見せてください」とか言い出す始末です。

カルテを見せろ……?
個人情報のこともありますから、「カルテは見せられませんよ」とお伝えしたんですが、「そんなこと言う人はうちの患者じゃない」と。
「いやいや、当院側に守秘義務があるんですよ。」
「おたくの患者がどうとかいう問題ではなくて、こちらの患者さまの個人情報を守る義務があるんです。」
そういったことも理解できていない方でした。
医療の常識をご存知ない方が、医療機関の実質的な運営に関わっている。
これがどれだけ恐ろしいことか、おわかりになるかと思います。

その後、話し合いは進んだんですか。
何度か連絡しました。
ただ、しばらくして判明したのが、当院に勤めていたその元職員は、移った先のクリニックでもクビになっていたということです。
どうやら、そこでも問題を起こしていたようで。

そこでもうまくいかなかったと。
そうです。
ただ、そこに在籍していたときに当院の誹謗中傷を行ったわけですから、クリニックとしての責任は取ってもらいたいと僕は考えていたんです。
ところが、その窓口の責任者は「業務委託のスタッフがやったことだから知らない」の一点張り。
ひどい有様でした。
「あなたでは話にならないので、院長やオーナーを出してほしい」と伝えても、「私が実質オーナーです」と。

めちゃくちゃですね……。
結局、そのクリニックは複数のコンサルに食い物にされ続けて、開業から2年ほどで2億円弱の赤字を出していたようです。
オーナーチェンジにはなったものの、その窓口にいた方は今もそこの利権にしがみついているという話を聞いています。
まだ、終わったわけじゃない

院長の中では、この件はもう解決済みなのでしょうか。
……正直なところ、まだ解決したとは思っていません。
山田さんの中では「もう終わったこと」とお感じかもしれませんが、僕の中ではまだくすぶっているところがあります。
もし、一緒に戦ってくれる患者さまがいらっしゃれば、証言してくださる患者さまがいらっしゃれば、弁護士と一緒に、再度相手のクリニックに出向くことも考えています。
実は、すでに数名の方が一緒に戦ってくれることを約束してくださっているんですよ。

そこまでの覚悟があるんですね。
当たり前です。
当院の名誉と、患者さまの信頼を傷つけられたんですから。
ただ、それと同時に、この経験から学ぶべきこともあると思っています。
悪口では、クリニックは伸びない

一つ目は、人の悪口を言って自分のところを伸ばそうとするようなやり方のクリニックは、結局うまくいかないということです。
これは、あのクリニックが2年で2億円近い赤字を出したことが証明しています。
患者さまは見ています。そういった姿勢は必ず伝わる。

もう一つは何でしょう。
二つ目は、美容医療の本質についてです。
美容医療には、一定のビジネス的側面があるのは事実です。
クリニックを維持していくためには、経営を成り立たせなければならない。
でも、やっぱり本質は医療なんです。
- 患者さまのためにならないものを押し付ける。
- インセンティブのために不必要な施術を勧める。
- 化粧品を売りつけて、そのキックバックをもらう。
そういったことを平気でやるようなクリニックでは、やっぱりダメなんですよ。
長くは続きません。

院長がずっと言い続けてこられたことですよね。売り上げノルマを設けない理由も、そこにつながっている。
そうなんですよ。
うちのやり方は、派手じゃないかもしれません。というより、地味です。
短期間で爆発的に売り上げが伸びるようなやり方でもない。
でも、目の前の患者さまに誠実に向き合って、必要なものだけを提案して、信頼を一つずつ積み重ねていく。
僕はそれが、一番強いと信じています。
患者さまに支えられているということ

最後に、この件を通じて一番感じたことを教えてください。
やっぱり、患者さまに支えられているなということです。
あの件で、多くの患者さまが心配して連絡を下さりました。
「先生、大丈夫ですか」「こんなこと言われてましたよ」「先生が、そんなことするわけないのは私が分かってます」って。
その方々がいなかったら、僕たちは何も知らないまま、ずっと誹謗中傷をされ続けていたかもしれない。
だから僕は、これからもこの患者さまたちの信頼を裏切らないクリニックでありたいと思います。
そのために、自分たちのやり方を貫いていきたいと思っています。

院長、今日は話しづらい内容だったと思いますが、聞かせていただきありがとうございました。
いえいえ。山田さんこそ、話題にしにくかったでしょうけど、ありがとうございます。
美容医療の世界にはこういう現実もあるんだということ、知ってもらえるきっかけになればいいなと思います。
そして、そういう中でも真っ当にやっているクリニックがあるということ。
それが伝わるならば、今日話してよかったと思えます。
「人の悪口ではなく、自分の医療で勝負する。」
それが、トータルスキンクリニックの変わらない姿勢です。

福岡・天神・大名・美容皮膚科|トータルスキンクリニック院長
Dr. 分山博文
最後に ~ 院長ブログについて ~
上手な言い回しは苦手ですが、誠実な美容医療を届けたい気持ちは本物です。
だからこそ、言葉だけは自分で紡ぎたいと思っています。
ちょっと不格好でも、この文章が誰かにそっと届けば嬉しいです。





